パン屋さん閉店?

私が大学生か高校生のときに姉からそのお店のパンをもらったことがあった。
スパゲッティミートソースがぎっしり挟み込んだ食パンのサンドイッチだった。
すごくボリュームがあって、食べ終わると「お野菜食べなくちゃ!」と思ってしまうようなパンだった。
自動車の免許を取って京都市内をうろうろするようになってから 一人で買いに行くようになった。
おばさんは、衛生手袋の使い方を間違っているような感じだったけど
愛想がよくて、にこにこしながらパンを売ってくれた。
作っているのはご主人。
たいていは厨房にいらっしゃるので 拝顔することがなかなかなかった。
でも、たまーにお目にかかった。
なかなかの男前さんだった。
奥さんとは花粉症の話、皮膚のトラブルの話、女兄弟の話など、短い時間だけどイロイロな話をした。

いつだったか、7月かな、8月の昼ごろにお店へ行ったときは、
「もう売り切れたのかな?」と思うほど 売れ残りが少なかった。
繁盛しているなら何よりうれしいな、と思いながら
選んだパンを持って会計をしてもらいにいくと
奥さんが「ぜんぜん、(パンが) あらへんやろ?」と私に言ってきたので
「繁盛してはるんやね!いいことやわ。うれしい。また来ます。」と言ったら
「そうか。そう思ってくれはるんやね。ありがとう。ありがとう。」とちょっと涙ぐみながら言葉を続けてきはったので
また近いうちに買いに来ようと思っていたんだったけど
その後にお店の前を通ったら「夏休み」の張り紙があって、期間も書いてあった。
いつからいつまで、というのを確認しないまましばらく経ったので
久しぶりにお店の前を通ってみたら 張り紙も無く、お店の看板もなくなっていて、お店は開いていなかった。
張り紙に書いてあった夏休みの期間を 自分の記憶域をちくちくすることで思い出そうとしたけれど
記憶しようと思ってみていたわけではなかったので思い出せない。
なんとなく○月16日、とかそういう感じだったかなと思うことにして
17日に店の前を通ってみたけれど お店は開いていなかった。
そのお店の近くには 大河ドラマの影響で観光客が増えている某所があり、
お店の前を通ってから会社へ行くのは 歩行者や大型バスの「シケイン」のせいで 時間的に遠回りになるけれど
毎日 お店の前を通った。
毎日、毎日 通って確認してみても お店は開いていない。

今年の初め、半額セールをしてはった某レコード店さんで
「半額?うれしいけど、私は定価で買う!」と意地を張っていたために
お店の閉店を、不動産屋の「貸店舗」のプレートで知ることになったり、
十三の「珍寿」さんも 私の知らないうちに閉店してしまわれて、
いずれのお店の人にもお世話になったお礼もいえないままで ずーっと後悔している私なので
もう、毎日毎日 お店の前を通ると どきどきして
もし、閉店してしまわったのならどうしよう、と 悲しい気持ちにもなっていた。

とうとう、今日、電話をかけてみた。
無情にも「お客様のおかけになった電話番号は.....」 のアナウンスが流れてきた。

他の場所に移転しはったとかならいいな、
奥さんも ご主人も、おばあちゃんも、息子さんも、お嬢さんも
お元気なはずだよね、
と ぶつぶつとつぶやいた。

私がよく買っていたから
Cも休日出勤の社員の人たちに そのお店で差し入れのパンをよく買っていたのが数年前。
Cは 閉店を知っているだろうか。
知らせるつもりも無いけど。
そういえば、珍寿さんもCに連れて行ってもらったのが最初だった。
Cは私と付き合いをやめてから私と行っていたお店には顔を出していない様子。
たぶん、知らないだろうな。

お店を閉めてしまわれるというと
そのお店でであった品物の数々や お店の人との会話にもう出会えないのかと思うと淋しくなるけれど
心機一転 お元気にしていらっしゃるだろうな、と 思わないといけないな。
事情など 知る必要もないし知りたくないから
ただ お元気でいらっしゃるということだけを望み、
またどこかでお目にかかれるのを楽しみにしよう。

今は淋しいけど。