物忘れ

父が海外研修旅行から帰宅。
なにやらスーツケースの一点を見つめ 力をこめて何かをしている。
その一点は、錠だった。
ロックを解除する数字は、○○○、だよ、と声をかけたけれど
私の言葉を鬱陶しそうに首を振ってさえぎり、聞きもしてくれなかった。
しばらくしてもその姿勢がかわっていなかったので また 声をかけた。
「手伝ってもいい?」と。
そうすると、私にその場所を空けてくれた。
父があわせていた数字は、違っていた。
だまって 正しい数字を合わせて錠を開け、その場を去ろうとしたら
「お前が取ってきてくれた法務局の書類は?」と言い出した。
法務局で書類は取ってきていない。市役所だよ、と 言い直したら 機嫌が悪くなった。
こういう小さい間違いのやりとりで 私は髄分不安になる。
死にたい気分。