トランペットを買おうかと。

dosue2004-12-05

毎週日曜日にご飯をよばれに行くお店で出会った一人のジャズトランペッターさん。
義理堅い、強面で、でもかわいらしい そんな男性だった。
携帯電話に電話をしても、メールをしても返事が来なくなって
最悪のことを考えると それが本当になってしまうような気がして
できるだけ考えないようにしていたけれど
不義理な人ではないことがわかっていたから
最悪の事態ではないことだけを祈っていた。
しかし、残念ながら最悪の事態になってしまっていた。
お店の大将から連絡があったのは金曜日。
その人らしき遺体が自宅から見つかったとのこと。
翌日、所轄の警察署へ電話をして話を聞いた。
携帯電話の着信履歴に私の携帯番号が残っているだろうから、遅かれ早かれ私にも連絡はする予定だったと言われた。

「お誕生日には お母さんに感謝をしなさい。」と言った人。
その人のお誕生日である7月28日にはメールを送った。
「しばらくは、音楽の事だけ考えています。昔のように鳴りませんが、もう少しやってみます。メールをありがとうございました。」という返事が来た。
私はその人の音色を聞く機会に恵まれなかった。
いつか聞かせてもらいたいと思っていたし
その人にもらったVINCENT BACHのマウスピースで どうやって音を出したらいいのか
昼間に会って教えてもらいたかった。
ちょっと吹いてみたら音が出て、調子に乗っていた私をやさしく笑ってみてくれたその人。
遺体が本人であるという確認ができていないらしいが、私が吹き方を教えてもらえる確率はかなり低い。

トランペットを買おうかと。
本格的にはできないだろうから 単に「吹く」だけになるだろうけれど
それでもいいと思っている。
京都のキャバレー、ベラミの話をしてくれたその人のことを
倉本聰氏の作品が好きだったその人のことを
私はきっと忘れないし、忘れられない。
「おおきに、ありがとうございました。」