お惣菜とそばの店

夜、どうしてもそばがたべたくなった。
温かいそば。
ちょっとしょっぱい系のしっかりした出汁の「ゴンタロ」でも良いかと思ったけど
ゴンタロはオカミがえらそうにしていて 腹が立つのでヤメ。
どうしようかとしばしうろうろして
あぁそういえば、あそこに蕎麦屋があったな、というところへ行くことに。
学問の神様がまつられているところの近くの電車の駅の近くの大通りからは見えないそばや。
引き戸を開けて 「あぁ ハズレ。」とがっくり。
店主と、カウンターに座っている女性の たばこの煙で店内がもくもく。

そばにほかにそばやがないので がまんして入店。
カウンターから離れたテーブル席に座ると
「前に昼にきてくれたんだっけ?」と店主がため口。
「いいえ、今日が初めてです。」と答えた。
そばを食べているほかの客が見えないので どんなそばかわからないけど
温かいのが食べたいので鶏なんばんにした。

カウンターの女性は 知人女性から預かった預金通帳の中を見て、その女性が男に貢いでいることを察したから
その女性をパーっと買い物に連れて行ってあげようと思ってるの、というのを酔っ払いながら数回叫んでいた。
うるさい。
あぁ、耳の具合が悪くてよかった、と思いながら
そばを待つ。

そばがきた。
そばは、細かった。
えぐみもなにもかも一緒に打たれたそば。
温かい出汁の中に入っていると しっぱいしたソバガキのカスみたいになっていた。
でも、最後まで食べた。
出汁をすすろうとしたら
店主とカウンターの女性がタバコを吸い始めたので
一口だけ飲んで 店を出た。
「またよろしくね。またよろしくね。おおきに。」と店主。

もう二度と行かないな。

あの値段であのそばを出せる図太さってすごいな、とも考えるけど
あの値段であのそばを出さないと生活が成り立たないのかもな、とも考えた。
商売とは難しいものだとつくづく考える。